平成20年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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地域連携部会 活動報告連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告35引張強度が3MPa程度になる電解質膜を作製することができた。これは、従来膜(AMPS膜)の10倍以上の引張強度に相当し、機械的特性を大幅に改善できそうな目処を得た。なお、引張試験結果に再現性が無いのは、作製した電解質の膜厚が不均一であるためであり、作製方法を改善する必要があることがわかった。また、電池特性を調査するためにI-V曲線を測定した結果、従来膜(AMPS膜)に比べわずかに電池特性が劣ることが明らかとなった。 このように、電池特性はわずかに劣るものの、三元混合膜の機械的特性が従来のAMPS膜より優れていることが示唆された。平成21年度はPEFC内での耐久性や燃料電池特性の計測・評価を予定している。機械的特性が向上すれば耐久性も向上すると期待できるが、PEFC内の三元混合膜は、水素、空気、水、触媒(Pt-Rn)の環境にさらされるので燃料電池内での化学的耐久性も求められる。また、三元混合膜の出力がAMPS膜より低くなると実用化も難しくなる。よって、三元混合膜を実際にPEFCに取り付けた際の耐久性と燃料電池特性評価を行い、AMPS膜と比較する必要がある。上述したように、三元混合膜は大気圧下で成膜するため、今回表面を均一の厚さにするのが困難であった。表面が均一にならないと、PEFC内で膨潤しても電極との間に隙間が生じる恐れがあり、良好な出力が得られないことが考えられる。PVAを含むので、大気圧下で乾燥させて成膜しなければならないが、膜厚を均一にする新たな作製方法の検討も必要である。研究成果報告:燃料電池用CNTの合成とそれを活用した電極の高性能化田邊 博義(応用化学科)研究の目的: 燃料電池は、高効率でクリーンなエネルギ変換システムであり、その優れた環境適合性と省エネルギー性から最も重要かつ緊急な次世代発電技術と見なされている。しかし、その実用化と普及のためには、化学分野をはじめとする様々な分野に支えられた幅広い基盤技術が必要不可欠で、現有技術の改善はいうまでもなく、基礎を踏まえた新規な開発戦略による技術のブレークスルーが必要である。特に、電極材料として高価で資源量に限りがある白金を使用せざるを得ない現状を解決することが重要で、白金使用量を低減した電極の高性能化あるいは白金代替電極系の開発が急務となっている。 カーボンナノチューブ(CNT)は、様々な電気化学的エネルギー変換デバイスの電極材料として他の炭素材料に比べて化学的および物理的に優れた特性と上述の白金問題を克服できる可能性を持つ非常に有望な素材の一つである。しかし、CNTを用いた電極の特性は、CNT合成から電極形成までの履歴、使用する基板材料、化学修飾による化学的状態に大きく依存する。 本研究では、CNTを活用した白金を用いない高性能な電極の開発を目指し、二、三の炭素源から多層あるいは単層CNTを所定の基板材料上に直接合成(垂直配向型)あるいは調製したCNT分散液から成膜して試験電極を調製し、燃料電池のカソード電極およびアノード電極の両電極側界面から見た酸素および水素電極反応特性について、次の課題を中心に実施した。 ①�エチレン系炭化水素ガス、バイオメタンガス、天然ガス、廃タイヤおよびアルコールからのCNT合成と高純度化・分散 ②調製したCNT電極の酸素および水素電極特性 ③酸素−水素燃料電池特性研究実施の方法:・ CNTの合成: エチレン系炭化水素ガス、バイオメタンおよび廃タイヤを炭素源とした場合は、熱分解CVD装置により、また、アルコールを炭素源とした場合は、基本的にはCVD装置を活用した気相触媒流動法を用いてCNTを合成した。特に、廃タイヤを炭素源とした場合は、廃タイヤから抽出される油を資料 ▷ P135

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