平成20年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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4プログラム概要 武蔵工業大学と室蘭工業大学は、従前より水素エネルギー研究において協力関係にあったが、この協力を一歩進め、私立と国立、東京と北海道という異なる特性を相互に補完し、さらにその諸条件の違いを積極的に活用し、より広汎な分野で、また従来の慣行を超えて全学的に連携を進め、両大学の改善と発展を目指すものである。武蔵工業大学は長年にわたり、水素自動車の開発や、燃料電池の研究を行なって来ており、重工業都市の技術的土壌に支えられ、また学内でも水素エネルギー研究を行なっている室蘭工業大学と研究協力を進めて来た。今後とも連携事業の具体的取組の嚆矢としてこの研究協力を強化する。これを足がかりに、教育面においては共通の教育プログラムの作成をはじめ、さまざまな交流活動を進める。また、大学運営においては共同の選抜試験の実施や就職支援、あるいは職員の交流やサテライトオフィス設置など、幅広い協力事業を行なうものである。これらの連携により両大学の変革と社会への貢献をめざすものである。プログラムの目的 私立と国立、東京と北海道と、大きく異なる両大学の特性は、一方では双方の利点を共有し合う機会でもある。一例を挙げれば、私立大学の効果的運営、国立大学の基礎的教育の充実、冷涼な北海道での夏期の研修や訓練、温暖な東京での冬期の体育活動などがある。教育・研究すべての面にわたり相互に活かせる要素を活用して、社会の要請に応えることのできる大学へ変革することを目的とする。 具体的には、教育面で水素エネルギーに関する教育プログラムの両大学での共同作成を皮切りに、工学及び環境科学の広い分野で共同の教育プログラムを作成し、これに従って遠隔講義や出張講義あるいは学生の国内留学など、交流教育を進める。また、相互の大学院での入試の共通化や進学の促進、就職活動の支援、産学協同や技術移転の推進など、学生教育をはじめとする大学の多方面の活動で相互協力を進める。研究面では、武蔵工業大学にとっては、従来行ってきた実験室的研究開発を、実地で実証的に研究することができ、水素自動車の実用化研究に飛躍的な発展が期待できる。また、室蘭工業大学にとっては、先進的な武蔵工業大学の水素関連研究の知見と、研究教育資源を活用でき、従来から進められてきた研究への刺激も大きく、相乗的に水素関連の研究開発に拍車がかかる。これら相乗効果として、教育プログラムは水素エネルギーの製造から利用に至る技術体系にかかわる高い水準のものとなると考えられ、遠隔講義、出張講義、交流教育等と相まって、水素エネルギーに関する高度の知識、技術を有する人材を育成し、地域社会に貢献すること目的とする。すなわち、本事業では地元産業や行政、地域住民の啓発にも寄与する機会を設けることを想定している。言うまでもなく本事業の成果が実用に供されれば構造的な苦境に立つ室蘭地域の産業振興にも大きく寄与することは明らかであり、さらに本事業の実証実験段階では国内外からの調査見学者の来訪が予想され、短期的にも地域振興の効果は少なくないといえる。 また、大学事務職員の交流やサテライトオフィスの提供、共同の広報活動などを通じて、大学運営業務の合理化を図ることも目的の一つである。プログラムの予想される成果 本支援事業は、次のような10年後の成果を目標として計画が立案され(10年計画構想図)、そのプロセスは3段階に分けて実施を予定している。10年後の姿は、①教育研究連携、地域振興のための連携として、水素利用技術が地元企業で利用され、その技術が雇用創出に寄与し始める。そして、両大学の連携した大学院教育プログラム修了生が、企業内で水素利用技術の更なる技術開発にあたる。②大学運営の連携としては、入試広報の共同実施、地方入試実施へ相互協力、学生の就職活動への相互支援など、学生の募集から卒業に至るまで相互に協力し合える体制を確立■「戦略的大学連携支援事業」プログラム概要遠隔に立地する大学の教育・研究活動の連携-水素エネルギー研究協力を契機にして-武蔵工業大学 工学部長 片田 敏行
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