平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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3.1 シェル状カーボンを用いたPEFC用カソード触媒の 調製と酸素還元活性(平成20-21年度)3.1.1 研究の背景近年、微細な球殻状構造を持つ炭素材料(シェル状カーボン, SLC)は酸素還元活性をもち、多孔質化やホウ素・窒素などのドーピングによりさらなる活性の向上が見込めることが報告されている。これらSLCの特性は固体高分子形燃料電池(PEFC)のカソード反応においても有望で、高価な白金触媒に替わる新しい電極材料の創生につながることが期待される。そこで、本研究ではフルフリルアルコールとフェロセンからSLCを調製し、その酸素還元活性について検討を行った。3.1.2 アプローチと実験方法フルフリルアルコールにフェロセンを溶解させ、塩酸を開始剤として80℃で72時間重合を行った。生じた黒色固体を粉砕後700℃で焼成し、さらに6M硫酸処理によりFeを除去してSLC触媒を得た。以上のプロセスにおいて、フェロセン添加量(Fe質量比換算)や焼成時間を変えた試料を作製し(表1)、触媒構造や物性への影響について検討した。作製した触媒の構造解析はXRD、SEM、TEMおよびBET吸着法で行った。酸素還元活性は、酸素を溶解させた0.1M硫酸水溶液を用いたボルタモグラムから確認した。PEFC用カソード触媒としての性能は、セルにH2とO2を共に200ml min-1供給し、70℃運転でのV-I特性から評価した。3.1.3 評価結果TEM観察より、作製した触媒はいずれも20~30nm程度のシェル状構造をもつことが確認された。フェロセン添加量の異なる試料を比べると、シェル状構造は添加量の多いSLC(2)に多く見られた。また、焼成時間の短い試料(1h)ではナノシェルの成長が不十分であることが観察された。図8に各触媒の酸素還元ボルタモグラムを示す。酸素還元活性は焼成時間の短い試料が高く、中でもFe添加量1wt%のとき最も高い性能が得られた。この試料はナノシェル構造を形成するグラフェン層が最も短く表面欠陥が多いことから、酸素還元活性に対して有効にはたらいていると考えられる。このSLCをカーボンブラックと7:3の質量比で混合した触媒をPEFCのカソードに用いてセル性能を評価したところ、12.4mWcm-2の出力が得られることが確認された。3.2 有機金属錯体を用いたアノード用白金合金触媒の 研究(平成21-22年度)3.2.1 研究の背景現在、固体高分子形燃料電池における水素燃料の供給方法として、ガソリンやメタノール、天然ガスなどを改質する方法が用いられている。しかし、この方法は改質ガス中微量に含まれるCOによる被毒の問題を抱えている。また、直接メタノール型では改質器を省略してより小型化が実現できるが、メタノール酸化の反応プロセスは複雑であり、中間体として生成するCO被毒種により同様の現象が生じる。この問題はPt-Ru合金触媒の開発によって大きな飛躍を遂げ、実用化に向け前進した。しかし、RuはPt同様に希少で高価白金使用低減を目的とした触媒の開発3表 1 シェル状カーボンの試料名と調製条件図8 各試料の酸素還元ボルタグラム(電流密度はBET吸着から得た比表面積で標準化)連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会59
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