平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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料は過共晶であるので初晶MgNi相と共晶相からなる。SEM組織写真より、初晶は比較的大きいが、共晶相はマンガン未添加のものより微細であることが分かる。この合金の塊をやすりにより切削し、合金粉末とした後、高速気流中衝撃法により合金粉末に衝撃力を与え、球形化処理を施した。この処理による合金粉末の形状変化を図7に示す。やすりによる切削粉は高速気流中衝撃処理により球形化していることが分かる。Mg-Ni合金粉末では球形化処理のみでも水素化速度が増加することは、本研究で明らかにしている。ニッケルコーティングを施すとさらに水素化速度が増加するが、逆に水素吸蔵量は減少するため、以下では球形化処理のみ施した試料について水素化特性を評価した。Mg-30.8mass%Ni-0.2mass%Mn合金の水素吸収量の時間変化を図8に示す。純マグネシウムの水素吸収曲線では、数分間で0.8mass%程度の水素を吸収するが、その後は徐々に水素を吸収するものの、水素の吸収は遅く、水素吸収2時間では定常状態には達しない。他方、本研究で作製した合金は数分間で水素吸収が終了して水素吸収が定常状態になっており、水素の吸収速度が速いことが分かる。しかも、この合金では約5.5mass%もの水素吸蔵量を示した。次に、この合金のPCT特性を測定した。図9にこの結果を示す。純マグネシウムでも水素は吸蔵されるが、水素吸収速度が遅いため、理論吸蔵量までの水素は吸収されず、4mass%までの水素吸蔵量にとどまっている。また、吸収された水素は、その後の減圧過程においても放出されず、試料内にとどまっていることが分かる。これに対し、本研究で作製した試料では5.5mass%もの水素吸蔵量を示しており、水素化反応が速やかに生じて平衡状態に達していることが分かる。さらに、この測定は通常の測定の300℃ではなく、250℃で行われたものであるが、水素圧の減圧過程において水素は放出されていることが分かる。これは水素吸蔵放出がきちんと行われていることを示しており、本研究で作製された合金は水素吸蔵合金として優れた特性を有していることが分かる。最終的に、本プロジェクトではこの合金の粉末を約400g作製し、ステンレス製タンクに充填して水素吸蔵合金タンクを作製した。このタンクの内容量は500ccであるが、これに水素を4リットル貯蔵できる。この水素吸蔵合金タンクを本事業で作製した燃料電池システムに接続し、発生させた水素の貯蔵と燃料電池への水素の供給を行った。図9 Mg-30.8%Ni-02%Mn合金のPCT曲線図7 切削材および高速気流中衝撃法により球形化したMg-30.8%Ni-02%Mn合金粉末のSEM組織写真図8 Mg-30.8%Ni-02%Mn合金の水素化曲線連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会79
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