平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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成速度に対する撹拌速度の影響について検討した。これらの結果を図8、表4、図9に示す。撹拌速度を増加させることで反応8時間後のH2生成量は増加することがわかった(図8)。この現象は以下のように説明できる。AlとH2Oとの反応により生成するAl(OH)3がAl表面を覆ってしまい、反応速度が低下する。しかし、撹拌速度が大きい場合は生成したAl(OH)3がAl粒子表面から剥がれ落ちることで、効率よくH2が生成することができると推測される。さらに、このときの誘導期を表4に示す。いずれの場合の誘導期も非常に短く、攪拌速度には依存しないことがわかった。この結果から、反応温度60℃では、撹拌によるAl表面の酸化被膜が破壊されてから起こる反応よりも、酸化被膜に存在する欠陥部分での反応が優先的に起こると考えられる。また、反応時間とH2生成速度の関係についてまとめた結果を図9に示す。これより、反応時間が短い場合(反応時間0.75および1.5h)では撹拌速度が速いとH2生成速度も大きくなることがわかった。それ以降は反応時間が経過するに従ってH2生成速度は低下し、低い回転速度であるほど高いH2生成速度が得られる傾向がみられた。これは高い回転速度では反応が素早く短時間で起っているが、低い回転速度では反応が穏やかに長時間にわたり起っていることを示している。したがって、撹拌速度を制御することで、必要なH2生成速度に調整可能であると考えられる。さらに廃Al(切削屑、図10(左))を用いたH2生成反応についても検討した。廃Alは反応器で攪拌可能な大きさに裁断し(図10(右))、アセトンで2回洗浄後、空気中50℃で乾燥した後に使用した。この結果も図7に示す。廃Alを用いた場合でも、粉体のAlと同様にH2を生成させることができた。しかしながら、粉体の場合と比較するとH2生成量は非常に少ない。これは、実験条件が異なるため単純な比較はできないが、Alの形状、表面積の違いおよび廃Al中の他の成分などに由来すると考えられる。3.3.3. 燃料電池システム作動のための運転条件の最適化さらに、燃料電池システムを作動させるための反応条件について検討した。その結果、粉末Alを用い、反応温度80℃、攪拌速度800rpmの条件で燃料電池システムの連続運転が可能であることがわかった。また、2010年10月27日に開催された大学・地域間連携シンポジウムの会場において燃料電池を5時間以上作動させ、LEDを連続点灯させることができた(図11)。したがって、本研究で開発したH2製造法は実用化への高い可能性を有しているといえる。図10 廃アルミニウム(左)および裁断後の廃アルミニウム(右)の形状図8AlとH2Oとの反応のH2生成量(反応8時間後)に与える攪拌速度の影響(反応温度60℃)図9AlとH2Oとの反応のH2生成速度(反応8時間後)に与える反応時間の影響(反応温度60℃)図11 燃料電池システム(左)と大型ステンレス製H2製造装置(右)連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会83
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