平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
94/350

本研究プロジェクトにおける連携は、超電導物質の新規開発やその基礎物性を研究しているグループ(室蘭工業大学)と超電導の応用研究を行っているグループ(東京都市大学)の連携である。東京都市大学には、室蘭工業大学のような超電導の関連物質や新奇な電子物性を有する物質の作製・開発を行っている研究グループは無い。また、室蘭工業大学には、(SQUIDセンサ等の研究者はいるが)東京都市大学の研究グループ(代表:鳥居准教授)のような超電導体評価用のセンサシステムから超電導モータまで幅広く超電導の応用研究を行っている研究グループは無い。このため両者が連携することで、新たな超電導物質や新奇な特性を有する超電導物質について超電導応用の観点から評価し、それを超電導物質の開発にフィードバックすることができる。これにより新規な超電導材料の開発およびその応用研究の高効率化が可能となるため、本研究プロジェクトにおける連携の意義は大きい。また、このような連携により、基礎と応用の両面から学生に教育し研究させることが可能となり、これまでよりも大きな教育効果があったと考えられる。 この連携研究プロジェクトを進める中で、平成21年と平成22年に計3回の研究打ち合わせを行った。また、平成22年2月には室蘭工業大学にて研究発表会を開き、大学院生らが研究成果を発表し、活発な議論を行った。■ 超電導連携研究打ち合わせ 平成21年6月24日(水) 東京都市大学 電気機器研究室ゼミナール室 平成22年8月6日(金) 室蘭工業大学 物理学ゼミナール室 平成22年8月10日(火) 東京都市大学 電気機器研究室ゼミナール室■ 超電導連携研究 研究発表会 平成22年2月8日(月) 室蘭工業大学 Q306室参加者:東京都市大学および室蘭工業大学の教員7名、学生13名、計20名(1)電子ラマン散乱からみたBi系銅酸化物高温超伝導体における不純物効果 Bi系銅酸化物高温超電導体(Bi2Sr2CaCu2O8:Bi2212)やオキシクロライド系高温超電導体などの超電導体において、超電導転移温度Tcより十分低温におけるエネルギーギャップの性質がノード付近とアンチノード付近で大きく異なることが、光電子分光やSTM/STS、電子ラマン散乱実験から報告されている。特にZn不純物やNi不純物の添加によってTcは抑制されてもアンチノード付近のギャップが全く抑制されないという異常な不純物効果がY系銅酸化物(YBa2Cu3O7:YBCO)で報告され、他の銅酸化物にも共通した特徴なのかどうかを明らかにすることが急務となっている。そこで連携研究の一環としてZn添加したBi2212試料においてラマン散乱実験を行い、アンチノード付近のギャップに対する不純物効果を調べた(図1-1、図1-2)。Znを添加していないピュアのBi2212試料では、Tc(~90K)より充分低温の7KとTc付近の90Kで測定されたB1gスペクトルの差スペクトルにおいて、超電導によるブロードなペアブレーキングピークがEp~540cm-1に現れる。これは、アンチノード付近ではΔ~34meVであることを意味する。一方、Znを1%添加した試料のB1gの差スペクトルでは、ペアブレーキングピークがEp~350cm-1に現われ(図連携の意義2研究発表会(H22. 2. 8)の様子研究成果3連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会92

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です